文章を書くにあたり、つらつら考えたガントレットについての考察を纏めてみました。
以下の内容は、言うまでもありませんが全て自分の妄想です
お茶受け程度にお読みください。


● 構造について

まず、作中で見られる機能から大体の構造を考えてみる。
最も重要なのは、ガントレットが「装着者の意志に従って動く」ということ。おそらく装着者の神経に直接接続し、実際の筋肉の如く各パーツを操作できる機能が存在する。
(取り付け箇所が切断された腕、さらにもう片方の手には槍を装備していることから、物理的に力を伝達/操作しているわけでは無いだろう)
つまり単に腕に義手を固定しているだけでなく、神経系との接続・伝達を行うコードが身体に埋め込まれており、さらに神経信号の制御を行うパーツがあると考えられる。そしてこれが作中でも出てくる『コアパーツ』だろう。
(作中でストックさんが「コアパーツを含むガントレット」を取り外していることから、コアパーツ自体が直接腕に取り付けられているわけではない)
このコアパーツに取り付けることにより、他のパーツも装着者の意志通り動くと考えられる。

まとめると、大まかなパーツ構成は以下のように分けられる。

・腕との接続ユニット
・コアパーツ
・稼働パーツ

では、個々のパーツについて詳しく考えてみよう。


・腕との接続ユニット
前述したように、このパーツは腕に直接接続されている。おそらく手術か何かで、コード的なものを神経に繋いでいるのだろう。
接続コード+コアユニットに繋がるコネクタ+保持パーツ、という構成が妥当だろうか。
腕に取り付けられているのはコードだけでなく、保持パーツもガントレットの重量を支えるため、腕の肉に直接固定されていると考えられる。ただしガントレットの重さを単純に切断面に取り付けると、肉が重量に耐えきれない可能性が高い。想像するに、肩のあたりまで覆うようにパーツを固定し、関節全体で重さを支えているのだろう。
(ただし肩にぴったり密着するパーツだと、肩関節の動きに追随できない。部分的に固定して他の部分は伸縮・稼働するのか?)
横道に逸れるが、上記のように肉に直接固定パーツを埋め込んでいるとなると、その部分に汚れや雑菌が溜まりやすくなるはず。それによる化膿・病気などを防ぐため、身体と装備は常に清潔に保つ必要がありそうだ。つまり……意外と、汗臭くないのかもしれない。


・コアパーツ
接続ユニットを介して神経に接続し、ガントレット全体の動作を制御するパーツ。
これが壊れるとガントレットが全く機能しなくなる、最も重要なパーツでもある。
(勿論接続部が壊れても通信はできなくなるが、コードなんて断線以外は故障の可能性低いから優先度は低い)
そのため、コアパーツは保護部品(外郭)に収められた状態で取り付けられていると考えられる。ただ、最大4つのコアパーツを1本の腕に取り付けていることから、それほど大きな部品では無いのだろう。

コアパーツについて、原作中で以下の描写が見られる。

(1)ストックがガントレットを取り外す際、一緒に付いてくる
(2)コアパーツをガントレットから取り外すには専用の工具が必要
(3)コアパーツを増設するにも工具が必要。ただし取り付けのための簡易ユニットを短時間で作成できる

(1)については、接続部だけが外に露出していると考えれば問題ない。物理的な取り付け部を外し、神経の接続コードを外せば良い構造になっているのだろう。(何故ストックさんが取り外し方を知っているのかは不明だが。見て直ぐ分かる単純な構造なのか、軍時代にメンテを手伝っていたのか)

(2)についてだが、2つ仮説が考えられる。
1つはコアパーツは機密情報のため、簡単には外郭から取り出せない=解析できないような構造にしてあるというもの。機密を護るため、無理に取り出そうとすれば壊れて使い物にならなくなる、という構造になっているという仮説である。グランオルグに魔動機械の技術は殆ど無いようだが、一応の備えとしてそのように設計したというのは考えられる。
2つめは、保護機能を高めるために外郭が堅固に組み合わされており、普通の方法では分解できないというもの。蓋のように簡単に開く場所が無いため、工具が無い状態で取り外そうと思えば外郭自体を破壊する他なく、それだけの衝撃を与えてしまえば中の保護パーツが壊れる可能性が高い。そのため道具の無い状態では取り出せなかった、という仮説。
軍の技術という点から考えると、仮説1のほうがしっくりくるかもしれない。

(3)は、コアパーツが神経と接続されているのを考えればもっともな話だろう。精密な動作を行うためには装着者個人の身体に合わせて調整する必要があり、拾ってきたパーツをそのまま取り付けてもまともに動くはずがない。
また、どうしてコアパーツを一旦取り外したのか?(ガントレットごと交換はできないのか)という疑問もあるが、神経とのリンクと同様に接続パーツの形状も個人の体格に左右され、ロッシュの接続パーツと新しいガントレットとは接続部の形状が合わない可能性が高い。
コアパーツを取り外してロッシュのガントレットに取り付け直すか、それとも接続パーツとを調整して新しいガントレットに交換するか……どちらもあの状態では困難だが、部品自体を新設する必要が出てくる接続パーツ調整より、パーツの取り出し/取り付けのほうが容易だとソニアは判断したのだろう。
(実際は、元の持ち主も新たな取り付け先もロッシュさんだから、付けたら付いた可能性が高いのだが……まあ、彼女はそんなこと知らなかったわけだし)


・稼働パーツ
コアパーツに取り付けられる、実際に動作して攻撃などを行うための部品。キャラデザ絵で言うと爪やその周辺。
作戦行動時に技官などが同行していないところから、取り外し・取り付けは装着者レベルで可能と思われる。このため、平時・行軍時・戦闘時などの場合によってパーツを交換している可能性も高い。キャラデザレベルの巨大な爪を常に付けているわけではないはず。
(ごついガントレットで城や町を闊歩してたら、それはそれで面白いが)
また、動作時は爪の1本ずつが動いているようだが、さすがにそれぞれにモータが付いているわけではないだろう。極力重量を押さえる必要もあるだろうし、魔動力に従って伸縮する金属、人工筋肉のような素材を使っているなどの方法が考えられる。


以下、構造についての要点。

・部品は大きく分けて接続ユニット、コアパーツ、稼働パーツ
・接続ユニットは腕に直接固定されており、取り外し不可
・接続ユニットはガントレットの重量を支えるため、肩にかけて取り付けられている
・コアパーツは本体+保護外郭という構造。取り付け時には調整が必要なため、滅多に取り外さない
・稼働パーツは容易に取り外し・取り付け可能。



さて、構造は以上として、後は細かい点を考察していこう。


● 動作時のエネルギー源は?
機械部品である以上、それを動作させるにはエネルギーが必要。ガントレットの場合、それをどこから得ているのか?

まず、普通の魔力兵器……例えば魔動兵などは、何らかの方法で外部からマナを取り込んでいると、原作中に「魔動兵の使用はマナの枯渇を招く」という描写があることから考えられる。機器の中、もしくは外部にマナを集めてエネルギーとして使用可能にする装置があるのだろう。
では、ガントレットも同様な仕組みなのだろうか。恐らく応えは否だろう、理由としてワールドガイダンスにある「フェンネルが作ったガントレットと、ロッシュの使用しているガントレット(ソニアの兄作)はコンセプトが違う」という記述が挙げられる。
作中でフェンネル作のガントレットが登場するが、これは装着者の肉体にかかる負担を無視し、外部からのエネルギー供給で動作する仕組みだった。
これと異なるコンセプトということは、ロッシュのガントレットは装着者に過剰な負担をかけず、肉体の一部として継続して使用することを目的とされているのではないだろうか。
(重量の点で既に負担がかかりまくっているというツッコミは置いておいて)
それを考えると、動力については外部から供給されるのではなく、装着者自身の体力を消費しているという仮説が考えられる。マナを消費するとなると装着者の肉体が心配だが、魔動兵のような高出力ではない、あくまで「丈夫な義手」という機能だけならばさほどの負担を掛けずに使用できるのかもしれない。このリミッターを一時的に外して繰り出すのが、各コアパーツで覚える技なのだろう。


● 腕のどのあたりまでが義手なのか
唯一の資料であるキャラデザ絵を見ると、肘から先は生身の腕が入りそうにない気がする。また、よく見ると肘の付け根あたりが中空に近い状態(影になっているだけかもしれないが、少なくとも生腕の質感は見受けられない)
そのため、肘までは完全に義手と判断。

次に、構造の点で考察したが、腕との接続部のすぐ傍にはコアパーツが取り付けられていると考えられる。このパーツは制御ユニットであり、破壊されるとガントレット全体の機能が停止する重要部品だ。
また、戦闘時には、肘から先を敵に叩きつけるなどの方法で攻撃を行っている様子が見られる。もしその部分にコアパーツがあるとしたら、故障の可能性を高めるそのような攻撃方法は用意されないのではないだろうか。つまり、コアパーツは肘より上にある可能性が高い。
となると、義手は二の腕の中程から、というのが妥当ではないだろうか。ただし接続パーツが生身の腕に取り付けられていることから、見た目的には左腕全体が義手のようにも見えるかもしれない。


● こんな機能があるかもしれない
・温度調整機能

ガントレットは、強度の問題から鉄を始めとした金属でできているはず。
金属の特性として、比熱(温度の伝えづらさ)が低く、熱膨張率が高いことが挙げられる。
比熱が低いということは、外気温の高さ/低さが、ダイレクトに生身の腕に伝わってしまうということ。多少の時間なら我慢すれば済むが、ガントレットを付けているのは24時間。冬などに氷点下で行軍するとなれば、下手をすれば凍傷になりかねない。さらに言えば戦闘中に炎魔法を受けた時など、ガントレットで受け止めたのに腕を火傷してしまった……という事態も考えられる。
また、熱膨張の問題も深刻だ。接続ユニットは肉に直接固定されているため、これがそのまま膨張/収縮すれば、かなりの痛みを引き起こす可能性が高い。
これらの問題を解消するため、接続ユニット〜コアパーツには、温度を一定に調整する機能が付けられていると考えられる。人体に影響がなく、膨張も痛みを引き起こさない範囲ということで、30〜40度程度に安定しているのではないだろうか。



● 日常生活に使うことは出来るのか?

ガントレットは当然、戦闘に使うことを前提として開発されたものではあるが、同時に「義手」でもある。
ならば義手本来の機能、失われた手の代わりとして日常生活に使用することは出来るのか?
これに関して考えてみよう。

考察点1:日常生活に対応させるために必要なもの

戦闘用のガントレットを、日常生活に対応させるためにはどのような機能・部品が必要か、それをまず考えてみよう。

まず第一に必要なのは、稼動パーツの新設だろう。
戦闘用のガントレットは、強度や攻撃時の威力を考え、鋼鉄もしくはその他金属で作られている。キャラデザの巨大な爪ではなく、もう少し軽装の稼動パーツがあるとしても、戦闘に使うことが第一目的な以上金属製であることに変わりはないはずだ。
これを日常生活に使うのは、不可能かもしれないがやや無理がある。アリステルは床や壁に金属が使われてはいるが、家具や日用品などは普通に木材、ガラスなどで作られている。これに対して金属製の義手を使えば、壊れはしないかもしれないが、傷を付けまくることになるのは間違いないだろう。
このため、木やその他金属より柔らかい素材で作られた(もしくは外をコーティングした)稼動パーツが必要になる。

次に必要になるのは、日常生活用のコアパーツだ。
ガントレットの出力を制御するのはコアパーツだと推定できるので、稼動パーツだけを日常で使える物に変えても、コアパーツを変えなければ出力は変わらないはず。
重量級の金属塊を動かし、人どころか巨大な魔物にすらダメージを与えるだけの力をそのまま出しているとすれば、材質的に弱い稼動パーツが壊れるか、それとも持った対象が壊れるかのどちらかだろう。このためどうしても、出力を弱めるためのコアパーツが必要になる。

結論:日常用ガントレットの実用化には、稼動パーツとコアパーツの開発が必要。


考察点2:開発期間について

では次に、上記の機能を開発するだけの期間があったかどうかを考えてみる。

まず、ロッシュに移植した時点で、ガントレット(以下長いので義手)はまだ実験段階だと考えられる。
ロッシュ以外に義手を付けている兵が全く居ないというのがその根拠だ。戦場において四肢の欠損はさほど珍しいことでは無いだろうから、実用段階の技術ならもっと多くの兵士が使っていてもおかしくない。
そして4年前で実験段階だと仮定すると、それより前は「日常生活に対応するための機能を持たせる」という研究はされていないと考えられる。理由は、アリステルが現在戦時下にあり、研究所の主な目的が軍用の研究だと考えられるため。
実用段階に到った技術の転用ならともかく、未だ研究段階のうちから民間が使うことを仮定した機能の開発を行っている(予算が下りる)とは考えづらい。戦争中で全体的に金や物資が不足しており、尚且つ開発者であるソニアの兄は、(妹の年齢を考えれば)まだ若い研究員だったのだから、尚更実績も無い研究に余計な金は出せないだろう。

では、実績を出した後……つまりロッシュにガントレットを移植した後に開発が進められた可能性を考えてみよう。
移植から開発者、ソニアの兄が命を落とすまで、約2年。うち最低でも1年はロッシュのリハビリやガントレットに身体を対応させるための鍛錬、そして既存機能の安定化、安定などにかかると思われる。この間は当然、新機能……まして日常生活という、本来の目的とは離れた機能の開発にかかっている余裕は無い。
残された期間は1年、この間に日常生活に対応した機能の研究、開発は可能だろうか?
推測になるが、「難しい」と言えるだろう。何故なら1年を丸々日常生活機能の開発に使えるわけではない、同時に戦闘方面の機能を改良し、さらに軍の仕事を行っているのだ。ソニアの兄が天才レベルの研究者だったとしても、さすがに厳しい開発日程だったと思われる。

結論:日常用ガントレットの開発期間は、約1年。その間も他の開発や軍務があったため、日常用機能を開発するのは難しい。


以上より、開発期間が足りないため、ガントレットに日常生活用の機能は存在しないと推定できる。



以上、繰り返しますが全て個人の妄想ですので、あまりまともに信じないでください。
思いついたことがあったら順次追加。



セキゲツ作

2011.04.04 初出
2011.09.05 追記

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