ストックの帰還を祝う宴が大騒ぎのうちに終了した、その夜。仮宿として部屋を使わせてもらっているロッシュとソニアの住居に戻ったストックは、心地よく疲れた体を居間の椅子に納めていた。

「……やれやれ」

その対面に座っているのは、家の主であるロッシュだ。2人の間にある机には、酒と軽いつまみが置かれており、男同士が静かに語り合うための準備が整えられていた。
それらを用意したソニアは、身重ということもあり、既に寝床に入っている。今は彼女を寝室に送ったロッシュが戻り、ストックの向かいに腰を下ろしたところだった。

「ようやく落ち着いたな」
「……ああ。凄い騒ぎだったからな」
「おいおい、誰のせいでそうなったと思ってんだ?」

ストックの杯に酒を注ぎながら、ロッシュが苦笑する。

「お前がいきなりレイニーに求婚するから、あんだけの騒ぎになったんだろうが」
「…………」
「大体、大変だったのはこっちの方だぞ」

痛いところを突かれたストックは仏頂面で黙り込むが、長い付き合いの親友は、その程度で手を緩めてはくれない。自らの労を訴える口調は、しかし勿論本気で怒ったり呆れたりしているわけではなく、からかいに近いものではあったが。

「お前らが引っ込んだ後も、アトだのキールだのが凄かったんだぜ。収めるのに苦労したんだからな」
「……知っている」

聞こえていたからな、と応えるストックの表情は、一見すれば不機嫌に塞いでいるようにも見える。しかしそれが反応に困っての態度であることは、ロッシュにも分かっていた。少し前に再会を果たしたばかりだが、2人の距離間は、離れていた時間があったところで少しも変化してはいない。

「まあしかし、俺も驚いたのは事実だがな。お前がレイニーとそういう仲だったなんざ、全く気付かなかったぜ」
「……そうか」
「ああ。確かにレイニーの方は分かりやすかったんだが」

ストックが儀式の間から姿を消してから、アリステルに帰還するまで。いつになるかも分からぬ、そもそも本当に帰ってくるかどうかも判然としないストックのことを待ち続けたレイニーの姿を知る者としては、今回の求婚劇は素直に祝福したいことだった。それは勿論ロッシュだけの思いではない、だから驚き故の騒ぎはあっても、それ以降は皆それぞれ暖かい反応を示していたのだ。ただ、ストックに幼い思いを寄せていたアトだけは、最後までその可愛らしい顔を泣きべそで濡らしたままだったのだが。

「まあ、だが考えてみりゃ、前はずっと別に動いてたからな。知らなかったのも当然か」
「ああ……そうだな」

その言葉にふっとストックが寂しげな笑みを見せる、ロッシュの言葉が反面だけしか事実でないことを知る者は、今となってはストックのみだ。だが、選ばれなかった時間はけして消えたわけではなく、生きる者たちの中に確かに何かを残している。彼がレイニーと交わした約束も、本来であればもう一つの歴史に属するものだった。しかしその想いは失われることなく、繋がる未来でこうして実を結ぼうとしている。
それを分かっているからこそ、ストックは何も語らず、ただ酒を口に運んだ。

「……だが、例え一緒に行動していたとしても、お前は気付かなかっただろうな」
「何だよ、鈍いって言いたいのか?」
「いや、そうじゃない。戦いの最中は俺も、それどころでは無かったから……」
「……そうだな。あの時はお前……」

ふ、とロッシュの顔が曇る。ストックが姿を消す直前の戦い、誰にとっても辛く厳しいものであったそれが、彼の胸中を過ぎっているのだろう。そしてその時味わった喪失と悲嘆も、また。
しかしその想いが一時的なもので終わった今となっては、全てを過去として片づけることも出来る。ロッシュは目の前のストックに焦点を移し、ふっと笑みを零した。

「前から、決めてたのか? 戦いが終わったら言う、って」
「いや……正直、全てが終わるまでは、あまり考えたことが無かった」
「そうなのか? じゃあ、戻ってくるまでの間に、ってことか」
「……まあ、そんなところだ」

誤魔化すように酒を口に運ぶストックを、ロッシュは面白そうに眺めている。長い間を共に過ごし、余人には入り得ない絆を持つ親友同士だが、過ごした時間の性質上色事に関する話は殆どしたことがない。特にストックは色恋沙汰への興味が皆無に等しく、こんな様子の彼はロッシュであっても見たことの無い、実に新鮮な姿だった。だからつい揶揄の手を伸ばしたくなる、しかし勿論ストックとても黙って良いようにされているだけというわけもなく。

「……それを言うなら、俺も驚いた」
「ん、何がだ?」
「ソニアとのことだ。結婚しているだろうとは思ってたが、子供まで出来ているとはな」
「あー」

当然予想してしかるべきであったストックの反撃に、ロッシュは苦笑を浮かべた。しかしさすがに妻帯者の余裕か、それ以上の狼狽を見せることはない――ただ、少しばかり困った様子で視線を泳がせてはいたが。

「まあ、な」
「お前が父親か……」
「何だよ、そんなしみじみ言うなって」
「…………」
「笑うな、俺だって改めて考えると、結構くすぐってえんだからな」

照れて笑うロッシュを、ストックは眩しげに見つめている。そんな彼に向かって、ロッシュはにやりと笑いかけてみせた。

「大体、お前だってもうすぐ通る道だぞ。人事みたいに言うなよ」
「…………」
「楽しみにしてるからな?」
「……気が早い」

反撃に反撃で返されたストックが仏頂面で睨みつけるのを、ロッシュはまた笑ってかわして。……そしてその顔がふと、真面目なものへと変わった。

「ところで、ストック。これからのことは、決めてるのか?」

その様子と発せられた言葉に、ストックの態度もまた、真剣なそれに切り替わる。手にした杯を机に置くと、一拍置いて口を開いた。

「そうだな。とりあえず暫くは、旅に出ようと思う」
「そうか。どの辺りに?」
「詳しくは決めていないが、各国を回るつもりだ。……戦争が終わった世界を、見てみたいと思ってな」
「……そうだな」

ふ、とロッシュの目元が和んだ。今の世界の平和は、ストックの働きによってもたらされたものだ。その姿を見て欲しい、人知れず辛い思いをし続けてきた彼に、その労が報われたことを知って欲しい。それは、ロッシュが願うことでもある。

「そうしろ、しばらくゆっくりしてこい」
「ああ。そうさせてもらう」
「で、当然レイニーも連れていくんだろ?」
「…………」
「おいおい、あれだけ言っといて置いていくとか、それは酷えぞ」
「…………誘ってはみる。返事次第だ」
「あのなあ、お前まさか断られると思ってるのか?」
「……レイニーにも、仕事があるだろう」
「大丈夫だろ。さすがに首相だって、お前に着いてくのを止めるほど野暮じゃねえよ」
「そうでなくて、あいつの気持ちが……」
「そこはもう、疑いようねえだろうが」

普段のふてぶてしいまでの勢いは何処へやら、傍から見れば分かりきっている結果に悩むストックは、やはり異性関係に対してあまりに経験が足りないのだろう。勿論ロッシュとて人のことを言えた義理は無いのだが……むしろ、彼とソニアの馴れ初めを知っている者からすれば、今のストックとの類似性を感じずには居られないはずだが。

「まあ、レイニーのことはともかくとして」
「……ああ」
「ずっと旅を続けるわけじゃあ無いだろう? どこかに落ち着くつもりはあるんだよな」
「そうだな。一通り回ったら、定住を考えようとは思っているが」
「何処に住むつもりだ、やっぱりグランオルグか?」
「いや」

ロッシュが挙げた国――彼が産まれ育った国の名に、ストックはしかし否定の意を示す。

「今、グランオルグはエルーカを女王として纏まりつつあるところだ。俺が行っては、余計な争いの火種を持ち込むことになる」

淡々と彼が述べる、それは悲しいことだが、確かに予想出来る未来だった。ストックが死によって国を去った王子であることは、限られた者のみが知る事実である。しかし秘された情報というのは必ず何処からか漏れるものであり、そうなればストックの身を利用して国を揺るがそうとする輩が現れるのは目に見えている。長い戦争を終えたばかりのグランオルグは、今ようやく正常な発展に向けて歩きだしたばかりで、そこに再び内紛の種を蒔くわけにはいかない。……ストックがその国の王族であるならば、尚更に。

「そうか……確かにな。エルーカ女王には、もう話したのか?」
「いや、まだだ。だがエルーカなら納得してくれるだろう、あいつももう子供じゃない」
「ああ、そうだな。お前が居ない間も、立派に国を治めてたぜ。こっちまで噂が届いてたくらいだ」
「……そうか」

ストックの瞳が微かに和む、彼女と過ごした時間は彼の記憶から失われてしまったが、それでも兄としての親愛だけは消えることなく残っていた。

「だが、たまには行ってやれよ。女王も、誰かに頼りたい時だってあるだろ」
「ああ、勿論だ」
「お前も、全く故郷に戻れないってんじゃ、辛いだろうしな」
「故郷、か」

ストックが浮かべた表情に、ロッシュの視線が少しだけいたましげに揺れる。

「……記憶、結局戻らねえのか」
「そのようだな」
「そうか……」
「今はまだ、というだけかもしれないが」

言いながら、ストックが杯を口に運んだ。語られているのは彼自身のことのはずなのに、込められた感情の薄さは何処か人事を眺めているようにも感じられる。

「何かの拍子で思い出すしれないし、やはり一生このままかもしれない……ハイスがどんな手段で、エルンストの記憶を奪ったか分からない以上、どうなるかを予測することもできない」
「……厄介なもんだな」
「そうでもないさ。別段……無ければどうなる、というものでもないからな」

ふ、とストックが笑った。その言葉が嘘ではないことを示すように、拘る様子の感じられない軽い声で笑ってみせる。

「ストックとして生きた時間の記憶は、確かにある。そしてこれから積み重ねることも出来る……俺には、それで十分だ」
「……そうか」
「エルーカには、すまないことになるが……」
「そうだな。……だからその分も、これから優しくしてやれよ」
「……ああ」

ストックの言葉に、ロッシュもまた微笑みを浮かべて、酒を舐めた。

「しかし、それなら何処に住むんだ。セレスティアに行くのか?」
「セレスティア?」
「ああ。あそこも戦の後は、結界を解いて人間を受け入れてくれるようになったからな」
「それは聞いているが」
「まあお前なら、そんな必要もなく入れるだろうが。何しろアトのお気に入りだからな」
「……どうかな、今夜ですっかり嫌われた可能性もある」
「はは、そりゃ確かにそうかもしれん」

幼くはあるがアトも女性、恋に破れた女ほど扱いづらいものはない。……そうは言いつつ、その程度のことで変化があるほど、アトの思慕が弱いものだとロッシュは思っていなかったのだが。

「……アトも、今は里の代表として頑張っているようだな」
「おう。砂漠化を止める研究でも、随分役に立ってるみたいだぜ」
「そうだな。だから……もう、俺が付いて護ってやるような必要など無いだろう」

そう言うストックの声音は、少しだけ寂しげに見えないことも無かったのだが。しかしそれには敢えて触れず、ロッシュはまた話を戻して言葉を続ける。

「そうか、それなら……シグナスにでも行くのか? ガーランド王も、随分お前のことを気に入ってるみたいだし」
「いや……」
「それともフォルガか、あそこも随分開けてきたんだぜ」
「……ロッシュ」

ストックがロッシュの言葉を遮った。その口調と表情は、完全に呆れを示している。

「何故、選択肢にアリステルが無いんだ?」
「…………」
「……何か俺が戻って不味いことでもあるのか」
「無えよ、んなこと」

ふてくされたような困ったような、何ともいえない顔をして視線を逸らすロッシュを、ストックは真っ直ぐに見詰める……いや、睨みつける。

「…………」
「あー、いや。あまり、俺が言わねえほうが良いかと思ってな」
「アリステルに来い、と?」
「ああ。……前に一回、断られてるじゃねえか」
「…………?」
「覚えてねえか? ほら、俺が新兵――キール達の部隊の隊長になった時に」
「……ああ」

覚えている、などというものではない。あの時あの瞬間、あの選択によって……歴史は、大きな二つの流れに分かれたのだ。そしてストックはそれらの歴史を歩み、正しい方向へと導いて世界を救ってきた。
だが、考えてみれば確かにそうだ。この未来はストックが情報部に残り、グランオルグへ向かった歴史が元になっているはずで、ならばロッシュの記憶に残っているのは。

「あの時、お前を副隊長に誘って、断られてるんだよ」
「ああ……覚えている」
「だから、な。まあ、縁起を担ぐなんてもんじゃあねえが……」
「ロッシュ」

言い辛そうに話すロッシュの顔を、ストックが見据えた。

「俺は……お前の誘いを、受けている」
「……あ?」
「お前は覚えていないかもしれない。だが……俺は確かにお前の元で、副隊長として動いていたことがあったんだ」
「…………」

唐突な発言に呆然としていたロッシュだが、やがてストックの意を悟ったのか。その顔が、ふっと真剣なそれへと変化した。

「もう一つの歴史、ってやつか」
「……ああ」
「お前が、白示録ってので行き来してた時間のことだよな。エルーカ女王から、ある程度のことは聞いてるぜ」

いまいち理解できていないかもしれんが、とロッシュは困ったように呟く。

「その歴史で、お前は……」
「そうだ。……俺は、お前と共に戦っていたんだ」

ふ、と沈黙が落ちる。言葉が途切れれば夜の帳の中のこと、耳に届くのは痛いほどの静寂のみだ。
しばらく2人は、互いに黙ったまま視線を交わしあっていたが、やがて。

「……そうか」

息を零すように、ロッシュが呟いた。

「悔しいな。全く、覚えがねえよ」
「当然だろうな、2つの歴史が同時に存在することは有り得ない。あの歴史は、今の時間に影響を与えている部分もあるが、記憶に残るようなものじゃないんだ」
「そうか」

はあ、ロッシュがと溜息を吐く。そして苦笑を浮かべて、酒を口に含んだ。

「だが、出来れば覚えていたかったぜ」
「……どうだろうな。記憶が無くて良かったかもしれないぞ」
「何でだ? お前と戦ってたんだろ」
「それはそうだが……向こうでお前は、相当苦労していたからな」
「…………そんなにか?」
「ああ」
「……例えば、何があったんだよ」
「………………」
「黙るなよ、そこで!」

怖いだろ、と声を荒げるロッシュに、ストックは笑みを浮かべた。

「声が大きい、ソニアが起きるぞ」
「ぐっ……」
「まあ、気にするな。一応無事ではあった、最終的にはな」
「一応って何だよ、最終的にはって……」
「気にするな、と言っている。今は過去より、これからのことを考えるべきだろう?」
「……まあな」

その言葉で、ロッシュもようやく諦めが付いたのか。追求の矛先を収め、それでも少しだけ不満げな顔で、ひょいと肩を竦めた。

「しかし、2つの歴史か。自分の選択で世界が分かれるってのも、妙な気持ちだろうな」
「……そうだな、白示録を持っている間は、常に緊張感があったのは確かだ。この決断で歴史が分かれるのではないか、と」
「だろうな。今は、もう持っていないんだろう?」
「ああ、エルーカに渡してある。また、グランオルグ王家が管理することになるだろう」

例え制限があるにしろ、時間を遡り、歴史を操ることができるようなことは、一人の人間の裁量で行っていいものではない。白示録も黒示録も、可能であれば二度と使うこと無く、封印し続けておくべきものだ。
その言葉にロッシュも頷き、ひとつ息を吐いた。

「そうだな。それが、一番だ」
「ああ。だから、例え今、これから行う選択で歴史が分岐したとしても……もう、俺には分からない」
「分岐か。どうだろうな、起こっていると思うか?」
「さあな、だが」

ストックの視線が強くなった。目の前のロッシュを見据え、言い聞かせるように――それがロッシュにか自分自身にかは分からないが――言葉を紡ぐ。

「例え、そこで歴史が分かれるとしても……俺は、自分が望んだ道を選ぶ」
「…………」
「自分の意志で、自分のために。俺は、アリステルに戻ってくる」
「……ああ」

ロッシュもそれを受け止め、そして静かに頷く。表情は、大きく動きこそしなかったが、安堵と喜びに満ちているのが確かに感じられた。

「戻ってこい。待っててやるよ、皆と一緒に」
「ああ。……今度は、直ぐに戻ってくるさ。何しろお前の子供が産まれるのに間に合わなせないといけないからな」
「……おう」

蒸し返された話題に、ロッシュが照れた様子で視線を逸らす。それを笑顔で眺めていたストックだが、ふと申し訳なさそうな顔に変わり、言葉を続けた。

「ただ、また共に戦うことは、できないかもしれない……軍には、戻らないつもりなんだ」
「そうなのか?」

一瞬驚きに目を丸くしたロッシュだったが、しかし直ぐにその表情を緩めた。

「いや、良いと思うぜ、戦争も終わったことだし。むしろ手が足りてないのは内政面だからな、有難いくらいだ」
「……そうか」

戦いの中で出会い、共に背中を預け合う間柄であったロッシュとしては、ストックの選んだ道に寂しさを感じないと言えば嘘になるはずだ。しかし親友が剣を置き、血を流さぬことで人を護る方法を選ぶ時、それを祝福したいという思いを抱かないわけがないだろう。それが証拠に、ストックに向けられたロッシュの笑顔は、全く曇りのないものだった。
それを見てストックも、安心した様子で微笑を浮かべる。

「すまない、お前はまだ戦いを続けているというのに」
「謝る必要なんてねえよ、大体軍を率いるだけが戦いじゃ無いだろう。国を立て直すのだって、大変なもんだぜ」
「……それは、確かにそうかもしれんな」
「ラウル首相が思いっきりこきつかってくれるだろうな。覚悟しとけよ?」

意地悪げに笑うロッシュに、ストックが渋い顔になる。そんな彼の様子に、ロッシュはまたひとしきり笑いを零して。

「だが、どうして軍を離れようと思ったんだ? やっぱり前の戦いが関係してるのか」
「そうだな、それも無いではないが」
「何か他にきっかけでもあったのか?」
「ああ。……以前、レイニーと約束を……」

そこまで言って、ぱっとストックが口を噤む。しかし失言に気付いた時には既に遅く、当然のようにロッシュの顔には、面白がるような笑いが浮かんでいた。

「ほう、約束か」
「……そろそろ終わるぞ。もう夜も更けた」

実に分かりやすく話を避けるストックを、しかしロッシュは引き留めようとはせず、その逃亡を甘受してやるつもりのようだった。……とはいえその表情から、笑みが消えたわけではなく。

「そうだな、今日はもう終わるか」
「ああ」
「今日は、な」
「…………」

にやりと笑ったロッシュをストックが思い切り睨み付ける、だがその程度でロッシュ怯むはずもない。杯を片付けながらも続けられたその笑いは、ストックによって思い切り臑を蹴り付けられることで、ようやく止まったのだった。




セキゲツ作
2011.05.20 初出

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